
家で握り寿司をやってみたい。でも、シャリをどう持つのかすら分からない。握ってみたら崩れる。力を入れたら固くなる。筆者もそうで、刺身用の柵を買ってきても、結局は切って皿に並べるだけで終わっていました。
そんなとき、握りを教えている場面を最初から最後まで見る機会があった。2026年9月26日、長崎市・北公民館の調理実習室で開かれた長崎大学 魚料理研究会の活動日。7代目会長の松井さん(3年)が、飯台の前で部員に握りを教えていた。以前の記事では短く触れただけだったので、この記事ではその全工程を書きます。
結論から言うと、松井さんの教え方は「持ち方を一つ見せて、あとは自分でやらせる」。手順を暗記させるより先に、手にシャリを乗せる感覚を覚えさせる。家でやるときも、たぶんこの順番が近道なんだと思う。

飯台の前で握って見せる松井さんと、囲む部員たち
握り寿司教室は、飯台の前の人だかりから始まった
この日さばいたキハダマグロなどが寿司ネタになり、飯台にシャリが用意されたところで、松井さんの前に部員が集まってきた。写真を見返すと、飯台を囲む輪ができている。

飯台にシャリが用意されたところ
松井さんはスーパーの鮮魚コーナーでアルバイトをしていて、お客さんに頼まれた魚をさばくサービスで腕を磨いている人。家では家族や友達に寿司を振る舞うこともあるそうで、こう話していた。
「(プロと)比べるようなレベルではないけど、自分で食べる分には、数をこなしていたらおいしくできるようになった」
数をこなす。この言葉が、後で出てくる教え方とつながってきます。松井さんの話はもっと聞いたので、会長インタビューにまとめました。

松井さんが握る
「左手でこう持って」。松井さんの教え方を実況する
ここが核。出てきた言葉を、順番に、動作と一緒に書いていきます。
まず、握る前に出た言葉がこれ。
「手は濡らした方がいい」
道具の話より先に、手の状態の話。理由までは語っていなかったので、ここは筆者の補足として書いておくと、一般的には手を湿らせておくとシャリが手につきにくくなる、と言われています。
手を湿らせたら、松井さんが飯台からシャリを取って、左手に乗せた。
「左手でこう持って、指と手のひらの境目あたりにシャリを乗せる」
見せたのは持ち方一つ。左手の形と、シャリを乗せる位置。指の先でも手のひらの真ん中でもなく、指と手のひらの境目。部員はそれを囲んで見ている。

シャリの握り方を伝授中

手のひらに乗せたシャリ

指と手のひらの境目にシャリ

手のひらのシャリ、別角度
次に出たのがこれ。
「そこからは色々なやり方があるけど、俺は……」
やり方を一つに決めつけない。そのうえで、自分のやり方として「俺は」で見せる。正解を押しつけるのではなく、選択肢の一つとして手を見せる、という感じに筆者には見えた。教わる側も「こうしなきゃ」ではなく「こうもできるのか」で受け取れる気がする。
その「俺は」の続きで見せていたのが、指の使い方。右手の人差し指と中指の2本でシャリを軽く押さえて、その2本の指の間に収めるようにして形を作る。そして、くるっとひっくり返す。ネタが上に来て、握りの形になる。言葉にすると長いけれど、松井さんの手ではほんの一瞬だった。
筆者が聞き取れた言葉はこの三つ。説明は長くせず、あとは手で見せていた。

握り方を教わる部員たち
「俺も一回やっていいですか」「やってやって」。すぐに部員が試す
握って見せ終わった直後に、部員から手が挙がった。
「俺も一回やっていいですか」
「やってやって」
このやりとりで、すぐ交代。長く説明して手直しをするより、まず握らせる。写真にも、部員がシャリを手に乗せて握っている場面が続いている。

部員が握る

順番に握る部員

シャリを手に乗せる部員
一人が握り終わると次の人。並んでいく握りを見ると、キハダマグロの赤身が握りの形になっている。

握った寿司を並べる
「数をこなしていたらおいしくできるようになった」という松井さんの言葉と、「すぐやらせる」教え方は、たぶん同じところから来ているんだと思う。見ているだけでは数は増えない。だから見せたらすぐ渡す。

赤身の握りが並んだ飯台
握りだけじゃない。この日の「教え方」を、ほかの場面でも拾ってみた
握りの前、切り付けの場面でも松井さんは教えていた。言葉はこれだけ。
「包丁をちょこちょこ入れずに、一気に引いて、最後に立てる。立てるのは見栄えの問題」
一言で言い切って、手を見せる。握りのときと同じ型です。

切り付けを教える松井さん
教えているのは松井さんだけではない。ムニエルのフライパンの前では、上級生が後輩にどちらの面から焼き始めるかを教えていた。
「皮を下にして焼く。皮がカリッとして見た目もおいしそうになる」
あちこちで誰かが誰かに教えている。松井さんが活動日の仕組みについて話していた言葉を思い出した。
「1年に7〜8回やっていれば、いつの間にか人に教える側になっている」
教える側と教わる側が固定されていない。だから「長く説明する」より「見せてやらせる」型になるのではないか、というのが筆者の見立てです。

ムニエルはどちらの面から焼き始めるか
家で試すなら。基本の流れ(筆者の補足)
ここから先は松井さんが話したことではなく、家庭で試すための一般的な手順として筆者がまとめたものです。分量は目安で、お好みで調整してください。
目安:2〜3人分。握る作業は20分ほど(シャリを炊いて冷ます時間は含まない)
用意するもの
基本の流れ
1. シャリを人肌程度に冷ます。
2. 手酢で両手を軽く湿らせる。松井さんの「手は濡らした方がいい」はここにつながる。
3. 右手でシャリを一口大に取り、軽くまとめる。
4. 左手の指の付け根あたりにネタを乗せ、わさびを置く。
5. ネタの上にシャリを乗せ、右手の指で軽く押さえて形を整える。
6. 上下を返し、上からもう一度軽く押さえる。
コツ
よくある質問
Q. ネタは何がいい?
A. 刺身用の柵ならなんでも大丈夫だと思います。この日はキハダマグロの赤身でした。スーパーのさばきサービスを使えば、柵の状態で手に入ります。
Q. 握ると崩れる、または固くなる。
A. 握る力の問題であることが多い気がします。まず持ち方だけ覚えて、あとは数をこなすのが近道だというのが筆者の意見です。
まとめ
まずは今夜、スーパーで柵を一本買ってきて、シャリを手のひらに乗せてみませんか。



